土地の売却を検討している場合はもちろんのこと、相続や贈与などで「自分が所有している土地はいくらで売れるんだろう?」と、土地の価格を知りたくなる場面もあるかと思います。
不動産は一点もの。同じ土地は存在しないからこそ、土地価格を決めるにはそれなりの知識と経験が必要です。
土地価格を決めるのは難しいからこそ、私たちのような不動産会社が存在しているわけです。
しかし、一度土地を査定してもらった人なら分かると思いますが、同じ土地でも不動産会社によって査定額は全然違ったりします。

まず大切なのは「相場」を知ること
ブランド品や自動車など、どんなものにでも「相場」というものがありますよね?
相場というのは、簡単にいうと基準額のようなものです。
例えばブランド品であれば、「このバッグの相場は3万円だけど、状態が良いので35,000円くらいで売れるだろう」というように、相場を知っているとモノの価格設定が簡単にできるようになります。
土地の価格を決める場合も同様で、まずは土地所在の相場を知ることが何よりも大切です。

初めて土地の売却をする場合、相場の調べ方が分からないのも当然のことです。
せっかくこの記事を読んで頂いているので、土地相場の調べ方を伝授したいと思います。
といっても、土地相場の調べ方はとても簡単!
「過去の販売事例」と「現在の販売物件」を調べるだけでOKです。
近くの不動産会社に行って、「この地域の過去の販売事例と現在の販売物件のリストを下さい。」といえばもらえるはずです。
会社独自で販売事例データを貯めている場合もありますし、レインズというシステムから販売事例リストをダウンロードできるようになっています。
私の場合はより確実性を高めるために、管轄エリアの物件データを一日に一回自動抽出し、そのデータを元に買取査定をするようにしています。
そこまでしている会社はあまりないかもしれませんが、できるだけ多くの参考データを集めた方が正確な査定ができるようになります。
現在の販売物件は、スーモやホームズなどのポータルサイトで確認できるので、そちらで確認するのも良いと思います。
不動産会社から販売事例データをもらう際の注意点としては、1枚モノの物件資料だけではなく物件リストももらうようにすることです。
不動産会社が情報操作をして「極端に安い物件」や「極端に高い物件」の資料を見せる場合があるからです。
相場を調べる上で大切なことは、その地域の平均値を知ることだと思います。
偏ったデータでは正確な相場を知ることはできないので、できるだけ多くのデータを集めるようにしましょう。
土地価格を決める際の8つのチェックポイント
土地の相場を知ることができたら、次は土地ごとの特徴に合わせて土地価格を調整する必要があります。
すぐ近くにある土地でも、土地の形状や日当たりなどによって土地価格は変わってくるからです。
これからは、土地価格を決めるためにチェックすべきポイントについて説明していきます。
どのような道路に面しているか?
土地がどのような道路に面しているかは、土地価格に大きな影響を与えます。
例えば前面道路幅員が2mしかなかった場合、自動車が入ってくることもできませんし、建て替え時にセットバックが必要になり有効土地面積が少なくなってしまいます。
そのような土地だと価格が安くなってしまうのは、なんとなく想像できますよね?
道路の種別も重要で、私道の場合は道路所有者全員から同意書が必要になったり、43条但し書き道路の場合は建て替え自体ができない場合があります。
道路のことは市町村の役所で調べることができるので、売却を検討する場合は調べておいた方が良いでしょう。
日当たりは良いか?
マンションでも「南向きか北向きか」が価格に影響を与えるように、土地の場合も日当たりが良いかどうかは価格に影響を与えます。
土地の周りが四方とも建物に囲まれていて、太陽の光が入ってきにくい旗竿地などは価格も安くなりがちです。
一般的には道路が南側にある南向きの土地が良いとされていますが、北向きの土地でも南側に障害物がないような土地は好まれる傾向にあります。
どんな土地形状をしているか?
土地の大きさが同じでも、土地の形状によって建てられる建物に大きな違いがあるため、その分価格にも影響を与えます。
土地の形状は整形地が良いとされ、三角形の土地やデコボコのあっていびつな形状の土地は価格が安くなりがちです。
街中には極端に細長い土地などもありますが、このような土地は建物を建てられない場合も多く土地の有効活用がしにくいため安く取引される傾向にあります。
新築時に造成工事が必要でないか?
土地と道路に高低差があったり、山手に面していて新築時に擁壁の作り直しが必要な場合は造成工事が必要となります。
造成工事には高額な費用が必要となるため、その分土地価格が安くなってしまう可能性が高いです。
造成工事の規模にもよりますが、大規模な造成工事になると数千万円の費用が必要になります。
造成工事が土地価格にどれほどの影響を与えるかは分かりづらいため、売却前に複数の工事会社に見積もりを依頼しておくのがベターです。
昔に開発された山手の分譲地などでは、駐車場がなく道路からの高低差も10m以上ある物件などもあったりします。
このような物件は、購入者側も予算算出がしにくく敬遠されがちです。

不動産会社の中には造成工事に詳しい不動産会社もあったりするので、そのような会社に相談するのが良いと思います。
土地の大きさが地域に合っているか?
地域によって「売れやすいサイズの土地」というのがあります。
土地の周りに建っているお家を見てみると、大体似たような大きさの土地や建物が多いのではないでしょうか?
大豪邸が立ち並ぶエリアだと小さな土地は売れにくいですし、小さな住宅が立ち並ぶエリアだと大きな土地は売れにくい傾向にあります。
最近の建売住宅などを見ると分かると思いますが、できるだけ小さく分筆して分譲しているはずです。
例えば最低敷地面積が150㎡の地域の場合、320㎡の土地をそのまま売却するのではなく、160㎡ずつに分筆して2区画で売却した方が高く売れやすいです。
そのような地域で290㎡の土地を売りに出す場合は、2つに分筆することができないため土地価格も安くなりがちです。
土地の上に造作物が残っていないか?
売却しようとする土地の上に造作物が残っているかどうかも、土地価格に影響を与えます。
ちなみに造作物とは、古家や倉庫、井戸や塀などのことをいいます。
土地を購入する人はほとんどの場合、その土地に建物を新築することが目的で土地を購入します。
造作物が残っていると建物の解体や撤去にお金がかかるため、その費用分も見込んだ上で購入予算を算出する必要があります。
古家が残っている状態と更地の状態とでは、購入を検討している人が土地を見学する場合のイメージにも差が出ます。
不動産会社が土地を分譲する場合、更地の状態で販売するのもこのためです。
雑草を処分し砂利を引いてブロック塀をやり替えるなど、視覚的に綺麗な状態の方が土地は高く売れる傾向にあります。
過去に事件事故はなかったか?
建物が火事になってしまったなどの事件や事故がその土地上であった場合、土地価格にも影響を与えます。
事件事故の有無は、不動産売買契約を結ぶ際に購入者に伝えないといけないルールになっています。
どのくらい前までの事件事故を伝えなければいけないか?について明確なルールがある訳ではありませんが、後々のトラブルを避けるためにも知っていることは告知しておいた方が良いでしょう。
土地を購入した相手から「この事実を知っていたら購入なんてしなかった!」と言われてしまうと、売主側が不利になってしまう可能性が高くなってしまいます。
事件事故を知らずに購入して、引っ越した後にご近所さんから聞いてトラブルに発展してしまうこともあるので、事前に伝えておいた方が無難です。
周辺に問題となる施設はないか?
周辺に食品工場があって日常的に臭気がする。宗教集団の集会場がある。暴力団事務所が近くにある。
このように、周辺環境に影響を与えると思われる施設がある場合でも土地価格に影響を与える場合があります。
騒音や臭気など、周辺環境に与えると思われる施設については、購入者に告知する義務があります。
地域的に有名な施設に関しては、その影響を加味した相場形成がされている場合も多いので、一概に価格に影響があるとは言い切れません。
どのくらいの影響を与えるかは施設によって違うので、その地域に詳しい不動産会社に相談するのが良いと思います。
最後に
土地価格の決め方をテーマに記事を書いてきましたが、いかがだったでしょうか?
社会には様々な商品がありますが、そのほとんどが量産できる商品ばかりです。
不動産はそれらの商品と異なり量産できず、世界に同じものは一つとしてありません。
だからこそ、価格を決めるのにも色々と頭を悩ませることがあります。
しかしこれまでの販売事例データをなるべく多く集め、データを細かく分析していくことでかなり精度の高い査定が可能になります。
最近は不動産一括査定サイトが多数あるのでそれらを活用するのも良いと思いますが、最終的には自分自身で価格設定をすることをおススメします。
不動産会社の中には媒介契約を取りたいがために、全く売れそうにない価格を提示する会社もあるので、そういった会社には注意しましょう。
それでは最後までお読みいただきありがとうございました。